本をよるべに

本を読んだ感想や日々のことを思うままに書いてます

特別区の中は本当に幸せか 『ユートロニカのこちら側』

今回読んだ本です。

目次

購入理由

ディストピア小説の一つとして紹介されていたため買いました。

本の内容

5つの話で構成されています。
- リップ・ヴァン・ウィンクル
ジェシカの強い希望で、ジョンと二人でマイン社が提供している特別区アガスティアリゾート」という、視覚情報や声などの全ての個人情報と引き換えに働かなくても生活できる特別区へ入居する。
しかし、ジョンはいつも背後霊のようなものに見られていると感じ、無気力になっていく。
心配になったジェシカは、治療のためジョンをサナトリウムに入院させる。そこで、ジョンはデレクに出会う。

  • バック・イン・ザ・デイズ
    リードは、高校卒業後ルゼンブルという村から出て一度も戻らなかった。
    その間に、その村は土砂に埋もれてしまい両親も亡くなってしまった。唯一、姉のロージーだけが生きていた。
    村は、マイン社の実験場となっており18歳以上の情報を全て提供する代わりに資金提供されていた。
    両親の提供していた個人情報を、「ユアーズ」という収集した情報を使用して過去を体験できる機械を使用するという情報開示権が与えられたため、リードは「ユアーズ」のある八王子のラボへ行く。

  • 死者の記念日
    夜中にスティーヴンソンは、婚約者のリサに起こされサーヴァントより殺人が発生したため現場に行く事を指示される。
    アガスティアリゾート」の警部と、容疑者を探す。
    回想で、オリビエについて思い出す。オリビエによって、警部としてのあり方が変わったからだ。
    容疑者は、捕まえたが…。

  • 理屈湖の畔で
    ドーフマンは、「アガスティアリゾート」の機能で計測された、Aクラスの犯罪者リストに名前が載っているジェンキンスに対して、更生施設に入れて、更生させようとした。
    しかし、リゾート外の記者ミルナーが来たことにより、ジェンキンスは「アガスティアリゾート」より退去することになってしまう。
    退去後のジェンキンスを追っていたが、ジェンキンスミルナーと会い事件が起こってしまう。

  • ブリンカー
    ユキは、アメリカの留学先でララと出会う。
    そして、「アガスティアリゾート」の人たちの信用情報を覆すため、警備が薄くなるマイン社が経営するマイン大学のスタジアムて開催される大学アメフトの大会の日に爆弾を設置し、住民を驚かせ情報の価値を下げようとする。

  • 最後の息子の息子
    牧師だった、ロバート・アーベントロートと息子のペーターの話。
    ピーターの出した本で、たくさんの人が怒りピーターとその妻サラの命が狙われ、サラは亡くなる。
    そのため、ロバートと、ピーターと、ピーターの息子ティモシーはひっそり3人で暮らしていたがその暮らしを終わらせる。

感想

アガスティアリゾート」に住んでいる人はサーヴァントに従い、信用情報を落とさないよう等級を上げるのに必死になっている。その等級が貰える収入に直結しているからだ。
サーヴァントは、提供されている個人情報から最適の選択をしてくれるので、住民が考えて選択しているのかサーヴァントに導かれ選択しているのかどちらかがわからなくなっている。
深く考える事を放棄しているので、そんなことを住民は考えてないというのも恐ろしい。
深く考える事が異端となるこの特別区は、人に見える人ではないものに知らず知らずのうちになっているかのよう。
全てを管理され考えずにいられるラクさと引き換えに、お金を貰えるがそれは人としての幸せや自由はないのではないかと思う。

この話の中で一番、『死者の記念日』の話が切なく感じる。
お互いに今は亡き人のことを考えて行動をしているのに、徐々に食い違いすれ違ってしまう。 すれ違ってしまった瞬間が話の最後というのがとても苦しかった。

この本を勧めたい人

  • 管理社会系のディストピア小説が好きな人
  • 管理社会を作成の考え方の一つを知りたい人